泣きたい夜には…~Shingo~



「ひとみっ、香澄は?…赤ん坊は?」


ひとみは緊張した面持ちの向井先生をじっと見つめた。


奥さんは、


赤ちゃんは?


あぁ、俺まで緊張してきた。


「奥さんは大丈夫です。赤ちゃんも小さいけど、元気な女の子が生まれましたよ。

先生、おめでとうございます。助けるも助けないも、私には何もすることなかったわ」


ひとみは笑顔で言うと、大きな伸びをした。


「ひと…いや、浅倉先生!ありがとうございます!!!!」


向井先生は、ひとみの手を取り、大粒の涙を零した。


ひとみは苦笑して、


「やだ、先生ったら、赤ちゃんはしばらくNICUで管理することになりますから、抱っこは当分お預けですよ。

早く奥さんを労ってあげてくださいね」


向井先生はひとみに一礼すると、娘の無事と孫の誕生に感極まって涙に暮れる教授夫人を伴い、分娩室へと入って行った。



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