泣きたい夜には…~Shingo~


ひとみはもう一度大きな伸びをすると、


「慎吾、一緒に帰ろう?私疲れちゃったから車置いていく。

医局に報告とカルテ記入してくるから駐車場で待ってて!すぐ終わるから」


そう言うと、駆け足で戻って行った。


そんなひとみの後ろ姿を見送っていると、分娩室の自動ドアが開き、保育器に入った小さな赤ちゃんが看護師2名に伴われ出てきた。


保育器の中の赤ちゃんは目を閉じたまま、小さな手足をゆっくりと動かしていた。


小さいながらも必死に生きようとしている。


俺にはそう思えた。


「ねぇ、浅倉先生ってまだ3年目でしょ?あの処置の仕方、ベテランのドクター並みの腕前で驚いたわ」


「ホントよね?ベテランの小児科医だってお手上げなあの状態からよく助けられたよね?

彼女まだ後期研修医だし、分娩室に入って来た時、正直ダメだと思ったもの。

でも、浅倉先生じゃなかったら向井先生の赤ちゃん、助からなかったかもしれないわね」


「うん、私もそう思う。将来が楽しみね」



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