泣きたい夜には…~Shingo~



1週間後の夜、


桂川院長に食事に誘われた。


場所は赤坂の料亭。


数寄屋 造りのそこは都心とは思えない静寂さに包まれ、隠れ家を思わせる。


名前を告げると女将の案内で院長の待つ奥座敷へと案内された。


料亭というと政治家の密会というイメージが強すぎて俺にはとても居心地が悪い。


「さぁ、遠慮なくやってくれ!」


桂川院長は機嫌良く酌をしてくれるが、早く返事をしなくては…という気持ちが先走り、食事が喉を通らない。


もちろん、酒の味だってわからない。


早く話して楽になろう。


二度三度と深呼吸を繰り返し、


「院長、先日の件ですが」


緊張したが何とか声が出た。


「決心してくれたのか?」


期待に目を輝かせる院長に気持ちを伝えるべくもう一度息を調えた。


「どこまでご期待に沿うことができるか正直のところ全く自信がありません。

でも、精一杯努力します。

私の方からお願いします、桂川総合病院で働かせてください」



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