泣きたい夜には…~Shingo~
「お前、何するんだよ!!!」
彼女の予想外の行動に、反射的に飛び起きた。
彼女は後ずさる俺を壁際まで追い詰め…
これが世にいう壁ドンってやつなのか。
って、ドキドキしている場合じゃねぇ!
「私はお前じゃないわ、“ひとみ”よ」
そう言うと、俺の頬を両手で優しく包み込むとふわりと唇が重なった。
ただでさえ飲みすぎで心臓が暴走しているというのに、唇の柔らかさに思考回路は完全にフリーズし、どうしたら
いいのかわからなくなってきた。
「成瀬さん…」
ひとみが耳元で囁いた瞬間、俺の中で何かが弾けた。
ひとみを床に横たえ、驚く彼女を見つめると、
「傷ついても知らねぇよ」
そっとひとみの頬に触れた。
ひとみは首を振って、艶やかな笑みを浮かべると、
「もうこれ以上傷つくことなんてないわ。
向井のこと、忘れさせて…」
この言葉で迷いは消えた。
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