泣きたい夜には…~Shingo~



1回、2回と呼吸を繰り返し、再び目を開けた後、重い口を開いた。


「私の家は病院を経営しているの。大学病院に比べたらちっぽけなものだけど。

父が院長で、私はそこの一人娘。世間で言われるお嬢様という立場で何不自由なく育ったの」


そういえば以前、高山さんが言っていた。


ひとみが病院を継ぐようなことを…


「だから私は子供の頃から花嫁修業みたいなことをやらされていたの。

茶道に華道…これでも一応、師範まで持ってるんだよ。

中学に入ってから料理教室にも行かされた。今とは全く正反対のことをしていたんだよね。

大学を卒業したら父の決めた人と結婚する…それが普通のことだと思っていたの」


ひとみが自嘲するように話している姿は何とも痛々しく感じられた。



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