泣きたい夜には…~Shingo~



や、やべ…


ここで3人が顔を合わせたら修羅場になるのか?


いやいや、今までだって向井先生とは直接関わったことはなかったし、俺とひとみの関係を彼が知るはずがない。


病院内では医者とMR。


立場的にはひとみが上。


このまま全力で逃げたいところだが立ち止まらない訳にはいかない。


「どうしました?浅倉先生…」


無理矢理営業スマイルを作ってみたのだが、うまく笑えない。


「成瀬さん、お願いしていた喘息治療薬の件なんですが…あ、向井先生、仕事に戻ります」


まだ何かを言いたそうにしている向井先生を置いて、ひとみは俺の腕を掴んだまま、引きずるように職員専用ラウンジへと連れて行かれた。


ホテルのティーラウンジを思わせる落ち着いた空間。


座り心地のいいソファー。


さすが、大学病院。


金のかけ方が違う。


ひとみはコーヒーの入った紙コップを俺に渡すと、じっとこちらを見つめた。



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