泣きたい夜には…~Shingo~



「な、何だよ?」


何事もなかったように振る舞ってみたが、


この空気、何だか俺の方がやましいことをしているみたいじゃないか?


「助かった…けど、何か誤解してない?」


平静を装ったつもりだったが、ひとみには見透かされているようだ。


「な、何がだよ…」


『考え直してくれ』


そう言った向井先生の言葉が胸に引っかかる。


妊婦の奥さんがいながら関係を迫っているのか。


それとも、


復縁か…


ひとみは大きなため息を吐くと、


「向井とはもう、何でもないわよ!さっきのは仕事の話。今だに指導医ヅラしてうるさいったら」


心底うんざりといった様子。


「だったら何があったんだよ!!!?お前がこのごろおかしいってこと、俺がわからないとでも思っているのか?」


ひとみは悲しげな表情を浮かべると、


「ごめん、今はまだ言えない」


それだけ言うと、口を閉ざした。



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