夢のような恋だった


「茂の話じゃ、彼氏相当ご立腹みたいじゃない? 君にコケにされたって」


草太くんが?

驚いて中牧さんを見返したけれど、不敵な笑みを返された。


「ま、ちょっと勝手にしすぎたかもね、最近」


中牧さんの中では、私が悪いことになっているようだ。

確かに全く悪くないとは言わないけど、草太くんをコケにしたわけじゃないし、智くんにだって真剣に向き合った結果が今だ。

困って他の人を見ても、すぐに視線をそらされる。
知らないうちに、私は人の不興を買ってしまったようだ。


「……すみません。でも二股なんてしてないし、私は悪いことはしてません」

「へぇ。突然休むのは悪くないんだ、葉山さんにとっては」

「それは……」


拳をギュッと握りしめる。

泣いちゃダメ。
ここで負けちゃダメ。

喉のあたりが熱くなってきて、私は唇を噛みしめる。
泣いたら負けのような気がした。


「ま、いいや。来たからにはちゃんと仕事頼むよ」


ポンと肩を叩かれ、そこから不快感が広がった。

一日中監視の視線に追いかけられているような気がして、酷く息苦しい日だった。



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