夢のような恋だった


「や、紗優ちゃん」


目の前に雑誌が飛び込んできて、驚く。
顔を上げると茂くんが笑って立っていた。


「茂くん」

「どう? 元気になった?」

「うん。この間は迷惑かけてごめんね」


棚の整理をしながら話す。
あんまり話し込んでいるとサボっているように見られるから、あくまでも手は動かしたまま。


「……最近草太と会ってる?」


きた。
探りを入れに来たのかな。

茂くんと草太くんの関係は本当に測りかねる。


「会ってないけど、茂くんに関係なくない?」

「や。このまま草太と別れるならさ、俺と」


俺と?
促すように見つめると、茂くんが黙った。


「いや、何かあったらさ、教えてよ」


いつも核心はつかず思わせぶりな言葉だけ残す茂くん。
ズルいよ。
いつも傷つかないところで逃げてる。

珍しくとても苛ついて、私はそっけない口調で告げた。


「茂くんは、草太くんと別れた私には興味ないでしょう」

「は?」


目を剥いた彼に、静かに笑ってみせる。
書棚を整える私と寄りかかるようにしている彼の視線が絡む。


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