佐藤さんは甘くないっ!

「……んっ……」


闇に沈み込みそうだったわたしを引っ張り出してくれたのは、佐藤さんの声だった。

低くて甘い声が寝起きで掠れて、要らぬ色気をめいっぱい漂わせている。

勝手に高鳴る心臓がどこまでも恨めしい。

無意識の内にわたしをどきどきさせているなんて、佐藤さんはきっと気付いていないんだ。

そんな罪深い佐藤さんが漸くもぞもぞと動き始めた。

大型犬の寝起きを彷彿させるその動きに、自然と笑みが零れる。


「……し、ば……?」

「佐藤さんいつまで寝てるんですか?もうとっくにお昼ですよー」


ぽすんっ


頭を撫でようと手を伸ばしたのに、そのまま指を絡め取られて気付けばベッドに押し倒されていた。

予想外の展開にびっくりして目が丸くなるも、すぐに落ち着きを取り戻した。


「……………悪い。俺、その、なんか変なこと言わなかったか」


くしゃくしゃの髪の毛。

ちょっとまだ眠たそうな目に、真っ赤になった頬。

セクシーどころかキュート。

野獣……いや、狼も形無しって感じだ。

普段のわたしなら押し倒された時点で爆発してしまうけど、今日は佐藤さんが爆発済みだ。

思わずくすくす笑うと、口元を引き攣らせた佐藤さんがわたしを睨み付けた。

だって、可愛すぎますよ。

(仮)お付き合いのくせにお泊りなんて絶対にしないって思ってたのに。

してみたら楽しいことしかなくて困る。

佐藤さんの新しい表情をたくさん見られて、その上幸せな気持ちになれて。

本当に付き合ってもこんな風に過ごせるのかな。

脳裏に影がちらついたけれど、佐藤さんの顔を見ていたらすぐに暖かい光で満たされた。
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