佐藤さんは甘くないっ!

もはや朝食から昼食になってしまったご飯を二人で食べ、そのあとはずっとまったりしていた。

最初はちょっと危惧していたピンク色の空気になる気配は欠片もなく。

佐藤さんはソファにもたれ、わたしを後ろから抱きしめて本を読んでいた。

読みにくいのでは?と尋ねても、気にするなの一点張りだった。

わたしが気にするんですけど……なんて思ったのは始めの1時間くらい。

普段からミステリー小説が好きなわたしも佐藤さんから本を借りて、時間も忘れて読み耽っていた。

部屋に流れるのは相変わらずクラシック音楽。

だけど佐藤さんが教えてくれたから、昨日より少しだけ身近に感じる。

背中から伝わる熱が心地良くて、たまにうとうとしたり、かくんとしたり。

顔は見えなかったけど何度か佐藤さんに笑われたのが解ってちょっと恥ずかしかった。


「腹減ったな」

「今日は洋食ですかね?」

「パスタにするか」

「良いですね」


そんな風に過ごして、夜ご飯は美味しいパスタを食べた。

佐藤さんは美味しいお店をよく知っている。

連れて行ってもらった先ではジャズがかかっていて、とても落ち着いた雰囲気だった。

おすすめされた和風パスタを初めて食べてみたけどとても美味しかった。

ここ好きなんだよ、そうやって微笑む佐藤さんは大人の顔をしていた。

そのあと車で送ってもらって、わたしは1日ぶりの我が家に帰ったのだった。

たった1日空けただけなのに久しぶりな気がする。

佐藤さんの家とは全然違う匂いがして、悲しいような何とも言えない気持ちになる。

そんな静寂を切り裂くようにケータイが鳴った。


「……あははっ」


思わず声に出して笑ったのは、佐藤さんから来たメール。


“寂しくなった”


たった一言。それだけで胸がいっぱいになる。

わたしもです、打った直後に恥ずかしくなって消した。

明日会えますよ、そう打ち直して送信した。

月曜日が待ち遠しいなんておかしな気分だけど、紛れもない事実だから笑うしかなかった。
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