佐藤さんは甘くないっ!
午後は宣言通り、馨さんの穴を埋められるように仕事を頑張った。
宇佐野さんに頼まれた仕事をこなすことが多くて、それも宇佐野さんの計らいなのかと思うとまた胸が熱くなる。
しかし、今のわたしは胸を温めている場合じゃない。
笑顔でさらっと膨大な量の仕事を投げてくる宇佐野さんの元で働くのも結構大変かもしれないなぁ……と何故かいつも以上にくたびれた身体を引き摺って休憩室に向かった。
この時間帯の休憩室にいつもひとがいないことはリサーチ済みである。
三神くんが毎朝立ち寄っている新聞のコーナーもあるので、もし誰かに見られても誤魔化せそうだ。
気持ちを落ち着かせるために買ったいちごオレをごくごく飲んでいると、音も気配もなく隣に誰か座った。
話す内容を考えすぎて視界をシャットダウンしていたようだった。
慌てて顔を上げるとそこにいたのは三神くんで、いつもと同じ柔和な笑みを浮かべていた。
来てくれてありがとう、とか、わざわざごめんね、とか。
言おうと思っていた言葉が何も出てこない。
浮かんではいるのに、咽喉から先に出ていかない。
我ながら間抜け面で金魚のように口をはくはくさせていると、三神くんが我慢できなくなったように噴き出した。
「ぶっさいくな顔ですね」
真っ直ぐにわたしの顔を見ながらしみじみと言われた。
反論してやろうと口を開けた瞬間、思い出したように三神くんが言った。
「そういえば柴先輩、おめでとうございます。佐藤さんと付き合い始めたそうですね」