佐藤さんは甘くないっ!

言い終わってすぐ、胸が苦しくなった。

……三神くんに抱きしめられていたから。


「みかっ……」

「お願い……あと30秒だけ……柴先輩のこと、好きでいさせて…」


今まで聞いたことのない、絞り出すような声だった。

心臓が鷲掴みにされたような痛みが走る。

……誰も、悪くない。

宇佐野さんの言葉が頭の中をぐるぐる廻って涙を誘った。

違う。
三神くんをたくさん傷つけた。

……それなのに、わたしを包み込む三神くんの身体は温かい。

ごめんなさい、三神くん。


応えられなくて、ごめんなさい。


「……なんだかんだ言って、柴先輩は最初から佐藤さんのことしか見てなかったよ」


耳元で聞こえる声にはもう普段の明るさが戻っている。

そんなつもりはなかったけど……本当は佐藤さんに出会ったあの日から、気持ちが動いていたのかもしれない。

わたしにも解らないくらい、ゆっくりと、少しずつ。

いつから好きになっていたのかも、気付けないくらい。


「あーあ。2年前に告白すれば良かったかな」

「……それでもわたしは、たぶん馨さんのことを好きになってたよ」


考える暇もなく、無意識の内に口から飛び出ていた。

三神くんを傷つけてしまう言葉だと後悔するよりも早く、力いっぱい抱きしめられた。


「なにそれ、酷いなぁ……。でも、佐藤さんと柴先輩が出会ったから、俺とも出会えたんだよね、きっと」


その声はどこか懐かしんでいるようで、だけど嬉しそうな弾みをもっていた。

回された腕がそっと解かれる。


「……柴先輩、ちゃんと振ってくれてありがとう」


再び見つめ合った視線の先に、悲しみの色はなかった。
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