佐藤さんは甘くないっ!
―――プルル、プル、
「……郁巳?」
「馨さん」
2コール以内に出るという約束をしっかり守ってしまった。
言い換えれば、それだけ電話を待っていたということが馨さんにばれてしまう。
数時間前に聞いたはずの声なのに、もう寂しさを感じている。
……会いたい、会いたいよ。
「どうした?」
馨さんの声が優しい。
まるで目の前にいて、頭を撫でながら話してくれているみたいだった。
それだけで心に巣食っていた不安がさらさらと消えていく。
「……今日、三神くんと話しました」
暫しの沈黙。
それ以上なんて言えば良いのか解らなくて、わたしも押し黙ってしまう。
電話の向こうの表情は読めない。
馨さんが今何を考えていて、どんな顔をしているのか、わたしには解らない。
消えたはずの不安は簡単に蘇って、またわたしの心を蝕んでいく。
でも、それを止めてくれたのもやっぱり馨さんの言葉だった。
「……よく頑張ったな」
たった一言。
それだけなのに、涙が溢れて止まらなかった。
彼女が他の男を振って泣いているなんて、彼氏から見たらどうなんだろう。
嫌な気持ちにさせているかもしれない。
普段は嫉妬深い馨さんなのに、こういうときはどこまでも理解があって困る。
困らないけど、……申し訳なくて、ありがたくて、苦しい。