佐藤さんは甘くないっ!
ハンカチがぐっしょり濡れるくらい最上さんは泣き続けた。
わたしはどうしたら良いか解らなくて……申し訳程度に背中を撫でていた。
手を振り払われる覚悟だったけど、最上さんはただ黙って受け入れてくれた。
枯れるまで泣いたころ、最上さんは無言でわたしの背中をそっと押して、出ていくように促した。
……わたしがこれ以上一緒にいても、意味ないよね。
もしも同じひとを好きにならなかったら……仲良くなれたりしたのかな。
この会社では仕事のできる同性の上司なんて珍しいから、すごく懐いたのかもしれない。
でも……馨さんのことを好きじゃなかったら、出会うこともなかったのかな。
三神くんの言葉が不意に頭を過ぎった。
“佐藤さんと柴先輩が出会ったから、俺とも出会えたんだよね、きっと”
それは誰にもわからないこと。
だけど、見方次第でそんな風にも捉えられることを三神くんが教えてくれた。
こんな形だけど最上さんと知り合えて良かった、って思おう。
少なくとも……本心で話してくれた姿は嫌いじゃなかったから。
体操座りのまま動かない小さな後姿を一瞥して、扉に手を掛ける。
その直後、背中に向かって声が掛けられた。
「…………柴さん、酷いこと言って、……その…………悪かったわ」
それはとても小さな蚊の鳴くような声だった。
慌てて振り返ると、やっぱり体育座りのまま俯いていて、思わず笑ってしまった。
返事をするのもはばかられて、何も言わずに外へ踏み出した。
倉庫を後にしてオフィスに向かって歩き出すと、休憩室の長椅子に会いたかったあのひとがいた。