佐藤さんは甘くないっ!

―――――
―――


「柴ちゃんは?」

「橘律香、解るだろ?あいつと女子会だそうだ」


一体いつぶりかな、馨と二人で飲むなんて。

しかもそれが馨からのお誘いなんて、昔じゃ考えられなかったな。

それに週の中で二度も外で飲むことは珍しい。

月曜は泣き上戸になっていた三神と飲んだんだけど、それは敢えて馨には言わないでおいた。


「あ、遅くなったけど、誕生日おめでとう。これ、つまらないものですがー」

「……お前は本当に毎年律儀だな」

「そういう馨だって、僕の誕生日毎年祝ってくれるじゃん」


なんだかんだ忙しくてもお互いの誕生日を忘れたことはない。

良い歳になってくるとプレゼントを選ぶのは寧ろ簡単で、高確率で酒になる。

馨が贈ってくれるものも、同じく。


「お前が選んだ酒は全部美味いから助かる」

「ふふ、お褒めに預かり光栄だよ」


生ビールで乾杯し、渇いた咽喉を冷えた液体で潤す。

僕が大好きなたこの唐揚げをつまんでいると、馨が何か言いたげな顔をしていた。

……どうせ話したいことがあるんだろうとは思ったけど、なにかな?

柴ちゃんとの誕生日もきっと楽しかったんだろうし……プロポーズも成功したみたいだし。

次は結婚とか?まぁ、馨ならすぐにでもしそうだけど。

だって柴ちゃんしか見てないし、今後も死ぬまで他の女性なんて見ないだろうし。


「……宇佐野」

「ん、なに?」


たこの唐揚げ本当に美味しいなぁ、そう思ってもうひとつ箸でつまんだときだった。


「その……前からだが……最近特に、色々ありがとな」


ぽとり。

僕の大事なたこの唐揚げが落下した。

取り皿の上だったからセーフ、じゃなくて。


「……馨、頭でも打ったの?」


直後、後頭部に激しい痛みがやってきた。
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