佐藤さんは甘くないっ!

「いたいっ!!!」

「てめぇ、ひとが真面目に話してんのに……!」


耳まで赤くした馨が恥ずかしさを紛らわせるようにビールを一気に流し込んだ。

僕にこんな表情を見せたことなんて、今まであったかな。

しかもあの馨がわざわざ僕を呼び出してお礼を言うなんてね。

……ひとって変わるんだね、本当に。


「あはは、顔赤くなってるし。柴ちゃんと結ばれて本当に良かったねぇ」

「うるせぇよ……」

「初めは犯罪まがいの行為だったけど、馨がアクション起こさなきゃ柴ちゃんもずっとあのままだっただろうし」


犯罪まがい、という言葉に馨が目を泳がせる。

だって合意もないのにいきなりオフィスで襲っちゃだめだよね、うん。

オフィスっていうところが尚更いやらしい。


「それはその……成り行きで、だな」

「柴ちゃんがショックで仕事辞めたりしなくて良かったよね」

「!?……そ、そうか……その可能性もあったのか……」


今更どんよりと落ち込む馨に笑いが隠せない。

柴ちゃんだってさ、2年以上ずっと馨のことを上司としか見てなかったけど。

あんなに必死に頑張る姿を見てたらなんとなく解るよ。

自分のためだけじゃなくて、誰かのために頑張ってるんだなぁって。

馨もわりと鈍いからなぁ。

こういうのって少し離れた距離から見てる僕みたいなやつが一番、よく見えちゃうんだよね。
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