佐藤さんは甘くないっ!

はぁ、と思った以上に大きな溜息が出た。


「やっぱりね」

「や、やっぱりなのか…!?あいつ何か言っていたか!?」


いやいや、言ってなくても解るでしょ。

それが解らないのが馨なのか……なんでだろうね、当時僕たちの上司だった今の部長は褒めて伸ばす派だったのに。


「柴ちゃんは叱られても伸びる子だと思うけどさ。やっぱり誰しも少しは褒められたいでしょ。比率は9:1くらいでも良いけど、たまには褒めることもしないと」


僕の言葉を受けて馨が難しい顔をする。

なに、そんな変なこと言ったかな?


「……宇佐野が言っていることは解る、んだが」

「褒めたくない理由でもあるの?」

「…………好きなんだよ」

「は?」

「あいつが……郁巳が泣きそうな顔で仕事してるところ」


なんて爆弾が落ちてきたんだろう。

ねえ柴ちゃんに聞かせたいよ、今こいつなんて言ったと思う?

突然のドS発言に僕もびっくりしてる。


「俺に叱られた後も、それでも頑張って仕事してるところ……めちゃくちゃ可愛いんだよな」

「……だから褒めないの?」

「そうだな。あとは、もっと頑張れることを知っているからな」


……うーん。

まぁ、これも馨の愛の形……なのかな。

ちょっと引くけど。

ていうか柴ちゃんが可哀相なんだけど。

柴ちゃんも大概どえむだとは思うから……本人が嫌じゃないなら良いのかな。

ははは、と呆れた笑いが無意識の内に口から零れてくる。

とんだバカップルだよね、ほんと。

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