佐藤さんは甘くないっ!
―――瞬間、暗転。
デジャヴを感じる暇もなく背中に鈍い痛みを感じた。
予想外の衝撃で、呻き声のようなものが無意識に口から漏れる。
目前には佐藤さん。
背後には資料の棚。
落ち着いていたはずの心臓がびっくりして騒ぎ始めた。
どきどきと煩い鼓動が佐藤さんにも聞こえてしまいそうだ。
佐藤さんの整った顔がやっぱり近い。
これは本当にデジャヴだ。
もしかしたら全部夢なのかもしれない。
仮に夢だとしても、それはそれでとんだ欲求不満女だけど。
「……柴、あれがお前の返事なのか」
…あれ、とは?
問われている意味が解らず、何度か瞬きを繰り返した。
どうしてこうも佐藤さんは唐突なんだろう。
大体わたしが逃げるわけないんだから、部屋に入ってからゆっくりお喋りすれば良いのに。
それになんで無理やり資料棚に張り付けるんだろう。
結構背中痛かったなんて、言えないけど。
「さと、」
…そんな不満は、佐藤さんの口の中に溶けて、消えた。
「んんっ…!」
驚きからひっこめようと抗った舌を容赦なく絡め取られ、深く激しく口付けられた。
この前とは全然違う。
まるで獣のように噛み付くようなキス。
呼吸の仕方を忘れてしまいそうな荒々しさに頭がくらくらした。
飲み込めなかった唾液が口の端から伝い落ちる。
それでも佐藤さんはキスをやめない。
んん、とくぐもった声が漏れてしまうのが恥ずかしく、顔が熱くなるのを感じた。
荒っぽいのに、わたしを壊そうとするわけではなくて……やっぱりどこかに、優しさを感じて。
拒むどころか受け入れてしまっている自分が信じられなかった。