佐藤さんは甘くないっ!

甘い愉悦と痺れが脳みそから足の爪先まで浸透して、自分が自分じゃないみたいだった。


このまま快感に身を委ねて、全部、全部、忘れてしまいたいと思った―――けど。


脳内にフラッシュバックしたのは、わたしが仕事でミスをしたときに怒る佐藤さんの怖い顔。

偉そうに文句ばっかり、傍若無人で我儘で自分勝手で、俺様。

この鬼畜シュガーめ。

いつか見返してやる、よくやったって絶対に言わせてやる!

…そうだ、わたしと鬼畜シュガー……佐藤さんは、こんなことする関係じゃ、ないのに。

嫌じゃない、それはそうだけど、でも。






付き合ってもいないのに、これ以上はだめだ。






「~~~だ、だめっ!!!!」


無い力を振り絞って、思いっきり佐藤さんの身体を押し返した。

突き飛ばすどころか愛撫を止める程度の効果しかなかったけど、今はそれだけで十分だった。

佐藤さんは目を丸くして無言のままわたしを見つめている。

自分の格好を思い出して恥ずかしくなるよりも先に、わたしの口は開いた。


「だ、だめです、付き合ってもいない男女がこんなことしちゃっ!」


言った、言ってやった、正論を!!!

思わず心の中でガッツポーズを決めたくなったけど、佐藤さんの真顔がずいっと近付いてきたことでそんな余裕は一瞬にして吹き飛ばされてしまった。

真顔だってなんだって整った顔に変わりはない。

それもさっきまで、人には言えないようなエロティックなことをしていた相手だ。

どきどきするなと言われても無理がある。

負けじと佐藤さんの瞳を見つめ返すと、何の躊躇いもなく唇を奪われた。

…本日、何度目かわからない口付け。

舌を絡め取られる前に慌てて逃げ出すとあからさまに舌打ちをされた。


「っ、ちょ、ちょっと!!佐藤さんわたしの話聞いてましたか!?」

「ああ。柴が俺と付き合えば問題はない」


相変わらずの真顔で言うものだから、返す言葉も失くして固まった。

…佐藤さんの前世は絶対に王様だ、それも民衆の気持ちなんて考えない最低なやつ。
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