佐藤さんは甘くないっ!
「例のスーパールーキーっていう、三神くん?」
……あんなにびびっておいてなんだけど、ここで佐藤さんの名前が出る可能性は極めて低かったと改めて思った。
まずわたしがあの鬼畜シュガーに選ばれるなんて誰も予想がつかないだろう。
どう考えても恋のベクトルがわたしに伸びることはないと、普通のひとなら考えるはずだ。
「それとも佐藤さん?」
…………ああ、律香は普通のひとじゃなかった。
情報の整理が追い付かなくなり、思わずそのまま硬く冷えた床にダイブした。
そして何を思ったのか、律香がわたしの身体の上に覆いかぶさってきた。
さすがに缶ビールは手放したようでちょっと安心してしまったけど、それは当たり前の事だ。
律香の声が耳元で聞こえるが、わたしの脳みそはパンクしていてあまり耳に入ってこない。
完全に体力ゲージは振り切ってしまったようだ。
そのうえ律香がばたばたと暴れるものだから、わたしはその度にぐえぐえとカエルのような声で鳴いた。
「とか言っちゃってー!いくらなんでも、佐藤さんなわけないよねー」
「……やっぱりエスパーなんだ……」
「てことは三神くんしかいなくない?宇佐野さんはタイプ違うしー」
「……恐れいりました……」
「三神くんイケメンだし将来有望だし!最高じゃん!」
「……律香様と呼ぶしか……」
「さっきからなにぶつぶつ独り言いってるの?」
律香がわたしの顔を覗き込んできた。
ばちり、視線がぶつかり合う。
わたしは返す言葉に詰まってしまい、とりあえず大事なところを伝えようと言葉を絞り出した。
「…佐藤さんとは、その…お試し付き合いというか…なんというか…」
「えっ」
「えっ?」
顔を見合せたままふたり、頭の上にクエスチョンマークが浮かんでいるのが見えた。