佐藤さんは甘くないっ!
え、えええ…!?
佐藤さんは困惑するわたしを余所に、腕を掴んだままずんずんと歩いて行く。
速すぎて、というかコンパスが違いすぎて足が縺れてしまいそうだ。
佐藤さんの一歩とわたしの一歩は全然違うことをきっとこのひとは理解していない。
自分が長身だということをまず知ってほしい。
……こうやって余計なことを考えていないと、脳みそが沸騰してしまいそうだった。
佐藤さんの行動はいつも突然で、心臓がいくつあっても足りないとはまさにこのことだ。
わたしは現に心臓をばくばくさせながら佐藤さんに腕を引かれている。
何を言われるのか想像がつかなかった。
怒っているのはわかるけど、どうしてわたしが怒られなきゃいけないんだろう。
……怒りたいのはこっちですよ。
「って、ちょ、ええええええ!?!?」
一体どこに向かって歩いているのかと思いきや、佐藤さんは迷うことなくホテルに入って行った。
…ホテルといっても、その、ラブなやつである。
びっくりしすぎて抵抗する暇もなく、無人のフロントにわたしの間抜けな声が響き渡る。
手慣れた様子で鍵を入手した佐藤さんは一番近くにあった扉にわたしを押し込んだ。
あまりにも強い力で押し込まれたので、うぎゅ、と変な声が出てしまった。
「さ、さ、佐藤さん!?!?」
「出張だ」
「は、はい?」
「部長には連絡してある。これは出張だ。俺が言えば問題ない」
「なにこんなときに職権乱用してるんですか!?」
出張なら領収書とか諸々必要ですよね普通!?
部長も即オッケー出しちゃだめだと思うけど実際佐藤さんは権力者…!
「そんなもの俺が実費で行ったことにする。誰も文句は言わない」
「さすが佐藤さんですねーって納得するわけな、むぎゃっ」
またしても変な声が出てしまったのは、佐藤さんがわたしをベッドに放り投げた所為だ。
無抵抗のときに、それも顔面から落ちたのでさすがに痛い。
いてて、と鼻をさすっていると、背後からベッドが軋む音がした。