佐藤さんは甘くないっ!
言葉にすると、意外と軽かった。
あーあ。終わっちゃった。
違う、わたしが……終わらせちゃった。
「は?嫌に決まってんだろ」
なんの迷いもなく、それも真顔で。
佐藤さんは不機嫌オーラを織り交ぜた声音でわたしの言葉を打ち消した。
目が点になるとはまさにこのことだ。
あまりにも即答だったので、一瞬何を言われたのか理解ができなかった。
…だって、佐藤さんはわたしじゃなくてもいいじゃん。
こまめに連絡取る気もないみたいだし、仕事帰りに出掛ける気もないみたいだし。
……わたしはそんなの、嫌。
まだ本当に付き合ってるわけじゃないけど、こんな付き合い方なら1ヶ月も我慢できない。
一日に一通でいいからメールが欲しい。
…本当は一通じゃ絶対に満足できないけど。
三日に一日でいいからデートがしたい。
…本当は毎週休日は会いたいくらいだけど。
………だから、いやなの。
恋愛をすると自分の嫌なところばかり見えてくる。
重くて面倒臭くて、我儘で自分勝手で寂しがり屋で、嫌な女。
…前の彼氏は優しくて優しくて、そんなわたしのことも笑って許してくれたけど。
きっと長くは続かなかったと思う。
就職を言い訳に別れることができて、良い思い出として終われて本当は良かったんだ。
恋をするのが怖かった。
臆病なのは、受け身なのは、自分と向き合いたくなかったから。
マイペースで面倒臭がりな佐藤さんはきっとわたしみたいな女、嫌になる。
仕事のときはさばさばしていて付き合いやすそうに思われているかもしれないけど。
…本当のわたしは、小さなことですぐ情緒不安定になっちゃうんだ。
嫌われたくない。
仕事のパートナーとしての居場所まで奪われたくない。
このまま一緒にいて上手くいかないことが見えているなら、もうやめにしてしまいたい。
なにを血迷ってしまったんだろう……あの日、踏み出さなきゃ良かった。
そうしたら嫌な自分のことは忘れて、ずっとずっと仕事に没頭できたのに。