佐藤さんは甘くないっ!
「柴先輩、書類の確認をお願いします」
気付けば指が痙攣しそうなほど延々とキーボードを叩きつづけていた。
はっとして時計を見ればもう16時半。
三神くんの声で久しぶりに現実に引き戻された。
わかりました、と彼がまとめた会議資料を受け取ってざっと目を通す。
……教えたばかりのグラフも見やすく配置されている。
わたしの教え方が上手かったんだな、なんて冗談を口にする余裕もなかった。
「とてもよくできているとおも―――」
「このグラフは円に変更しろ。一番のセールスポイントはどこだ?これじゃ全然伝わらない。それと…」
突然だった。
鬼のように仕事をしていた佐藤さんが気付けば真後ろに立っていた。
そしてわたしの手から資料を奪い取り、赤ペンでチェックを入れ始めた。
三神くんはいつになく真剣な眼差しで佐藤さんの話を聞いている。
わたしも一緒になって聞いていると、確かに不十分であったところに気付かされた。
……でも佐藤さんに言われるまでは十分できていると思っていた。
違う、新人だからとか、ルーキーだからとか、そんなものは関係ないのに。
佐藤さんは誰にだって平等で真摯で、厳しく指導してくれる。
なのにわたしは……。
「ありがとうございました。今すぐ直します。」
「だけど全体的によくできている。さすがあの三神だな。」
同じ目線で笑いあうように見える二人の姿が胸に突き刺さって、うまく酸素が取り込めなかった。