Caught by …
 一度深呼吸をして気分を落ち着かせる。そして、手の中のそれをよく見てみる。書かれた文字ひとつずつ指でなぞる。…最後の名前の所だけ、ひどく乱雑で筆圧も強く、番号の所よりも凹凸が大きい。

「きっと、番号だけ書いて行こうとしたのね?だけど、名前を書いていないのを思い出して…」

 その光景が頭に浮かんで、笑ってしまう。

 思い出す顔、焦る顔…実際に見たことはないのに、容易に想像できた。

「レイ」

 彼の名前、レイ。…彼に、ぴったりな名前。

 真っ白な髪と、それによく合うグレーの目。

 長身で、すごくハンサム。

 だけど意地悪で、口も悪い。

 それに下品で、女の子の事を知り尽くしてる。…つまり、女遊び馴れしている。

 なのに、優しい所も…少しだけある。

 あの掠れた甘い囁き声は、何者も魅了する。

 彼の逞しい腕に抱かれると、涙が止まらなくなる。

 大きな手は、私を安心させる。

「レイ…?今、何してるんだろう。これは、あなたとまた会う為のものだって、期待してもいい?ねぇ…レイ」

 忘れなきゃいけないと思っていたのに、こんなものを置いていくなんて…。彼はズルい。私の中の気持ちは加速して、止めようとしたってもう止まらなくなるじゃない。


「レイ、もう一度…いいえ、今すぐ、会いたい。だって、だって…あなたのこと……─」

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