黄昏に香る音色 2
「如月さん…ですよね」


去ろうとする里緒菜の背中に向かって、優は声をかけた。


里緒菜は立ち止まり、ゆっくりと振り返った。

「そうだけど」

里緒菜は、優を見た。少し思い悩む。

(知らない子だ…やっぱり…)

訝しげな表情の里緒菜に、優は笑顔を向けた。

「確か…演劇部でした…よね」

「ええ…」

里緒菜は訝しげな表情のまま、頷いた。

そんな里緒菜を気にせず、優は笑みを崩さず、言葉を続けた。

「この前の公演…あたし、見に行ったんですよ」

「あ、ありがとう」

里緒菜は一応笑顔になり、礼を述べた。

優は、視線を鏡に移し、鏡に映る里緒菜を見つめ、

「とってもいい演技で…演技に見えないくらい…」

「?」

里緒菜は意味がわからず、優の言葉を待った。

優はクスッと笑い、

「いいストーリーで…如月さんが書いたんですよね」

里緒菜に視線を戻す。

「そうだけど…」

里緒菜は、優を凝視した。

優と視線が絡み合う。

優は口許を緩めると、

「愛する2人が、いろんな障害を乗り越え…ハッピーエンドに!」

キャッと、大袈裟に、優は声を上げた。
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