天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
リンネが去った後、僕はグランドの真ん中で、少し立ちすくんでいた。


もう夕陽は沈む…。



夜が来る。



学校だけが、廃校というわけでなく、

その周りの民家にも、人はいなかった。

「過疎…の町か…」


灯りのまったくない空間で、僕は深呼吸をした。

空気がうまい。

だけど…それと、これとは違う。

(人は…ここには、住まない…)



「赤星……」

アルテミアの声がした。少し沈んだ口調が、僕には悲しかった。思わず、目をつぶった。


「あたしが、体を取り戻したら…あたしを殺せ…」


アルテミアの言葉に、僕の瞳から…涙が溢れた。



「あたしの命でしか…償えない…」


僕は、首を横に振った。

「ほ、ほ…本当は、僕がやらなければいけなかったんだ……。僕がやれなかったから…」


「あたしは…お前の妹を…」

「そんなこと言ったら!」

僕は、アルテミアの言葉を遮った。

「僕は……ティアナさんを殺している!」

僕の両目からとめどもなく…涙が流れた。

「ぼ、僕だって…殺しているんだ!」

僕の嗚咽のような叫びに、アルテミアは黙り込んだ。





「あ、あれは…」

アルテミアは何とか…言葉を絞り出そうとした。

「あ、あれは……脱け殻だった…。お母様では…なかった…」



アルテミアの言葉を、僕は首を振って、否定した。


そして、その場で崩れ落ちると…号泣した。


アルテミアはもう…何も言わなかった。





「アルテミア……」

僕は、地面を見つめながら、

「辛いよ……戦うことが…辛いよ」


僕は初めて……恐怖とは違うものを、戦いで感じていた。

自分が殺される…死ぬとかではない。


ただ…ただ…辛いのだ。


「赤星…」

アルテミアには、慰める言葉が見つからなかった。

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