天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
霧の中…ビルとビルの一角にある喫茶店の前に、

美奈子はいた。


なぜ来たのか…わからない。

今…語る言葉もない。


ただ…店が営業できてるのか、気になっただけかもしれない。

美奈子は、ため息をついた。



一人の学生服を着た男の子が、キョロキョロしながら、美奈子を追い越して、

扉を開けた。


「いらっしゃいませ」

マスターの声が、扉の中から聞こえてきた。


その声を聞くと、美奈子はなぜか安心した。


くるっと身を翻すと、美奈子は喫茶店に背を向けて、歩きだした。



これからも…人ではなくなる者は、現れるだろう。


人の世界に、妬みや嫉妬…差別があるかぎり…。


だけど…。

美奈子は、手を握り締めた。

すると、銃が握られた。


(何が…正しくて…何が悪いのかは、わからない。だけど…あたしは、あたしの信念で戦う)




いずれ…新たなる指導者が生まれ…彼らを率いるかもしれない。

もしかしたら…美奈子が…。

未来はわからない。


(だけど…今は!)


百メートル程歩いて、振り返ると……喫茶店は消えていた。


周りは、いつもの町の喧騒に戻る。

耳元で、車のクラクションや、どこからか流れてくるBGM。


「うるさい世界…」

美奈子は舌打ちすると、足を速めた。

もう銃は持っていない。


美奈子はただ…喧騒をかわすように、歩き続けた。

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