天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「でもさ…学校がなくなったら、暇だな…。やることがないぜ。先輩達のように、無駄なあがきをしたくないし…」

俊介は、椅子にもたれかかると、大きく背伸びした。

リョウは席を立ち、教室内の窓に近づいた。

机が、3つしかない教室は、何か寂しい。

窓を開け、リョウはグランドの向こうに広がる山々の…さらに向こうを、見つめた。

あの先に、剣が刺さった岬がある。

リョウは、胸を押さえた。

なぜだろう…。そこにあるものを考えると、激しく胸が痛んだ。

切ないとか…悲しいとかじゃない。

(この痛みは…)

リョウはぎゅっと、胸を握った。

(悔しさだ) 


リョウは思った。

どうして、平凡に生きる人達は、死ななければならないのか。

ある宗教家は、この島に逃げ込むまでに、人は罪をおかしすぎた。この星を汚し過ぎた。

だから、滅びるのは、その報いなのだと説いた。

(神に祈りなさい。死した後…楽園にいく為に…。神に懺悔しなさい)

その言葉を、村の広場できいた時…リョウは激怒した。

宗教家にこう言いたかった。

(殺されるのに、どうして懺悔が必要なんだ!)


(神は…神なんて…もういないんだ…)




リョウは、遠くを睨みながら、フレアと俊介に言った。

「僕は…剣の岬にいくよ。そして、剣を抜く!」

リョウは拳を握りしめ、

「その剣で…魔王にせめて…一太刀を浴びせてやる」


それは、考えもない子供の無謀な夢物語だった。

絶対に無理だろう。

だけど…大人は無理だとわかったら、やろうとしない。

だけど…無理だけど、やってやると思う者が、無謀から活路を見つけることが、できるのだ。

「ば、バカなこと言うなよ」

俊介は驚き、顔が引きつった。

「僕は行く!」

リョウは、もう決意を決めた。


そんなリョウを、フレアは暖かく見つめていた。

そして、力強く頷いた。



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