天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「兜博士…」

九鬼は顔をしかめた。



「余所見してる余裕がああ!」

廊下側の窓や柱が切り裂かれ、鋭い刃が九鬼を狙う。

「な!」

九鬼の体に刺さったと思ったが、手応えがなく、

九鬼の体が消えた。



残像さえ残る程の速さで移動した九鬼は、

いつのまにか教室の中にいた。

「舐めるな!」

廊下に突きだした方とは逆の腕の刃を、横凪に払った。


九鬼が足で蹴り上げたボロボロの木製の机が、真っ二つに切り裂かれた。

「ちょこまかと!」

その場には、九鬼の姿はなかった。

回転し、九鬼を探そうとした時、

その者は足を払われた。


相手の懐に入ると、九鬼は視界の下…板張りの床に手をつける程、身を屈めると、

足を払ったのだ。

体勢を崩した相手は、二本の刃を床に突き刺し、倒れるのを防いだ。


九鬼は後ろにジャンプすると、距離を取った。

木製の机が並ぶ教室の作りを、一瞬で把握すると、

九鬼は一度、呼吸を調えた。

「おのれ!」

突き刺した両腕の刃を抜くと、勢い余って教室の扉に激突した。

九鬼は、その者の姿に目を細めた。

両腕の肘から下は、日本刀の刃が直接つけられており、

その為、転けると立ち上がるのは、困難を要する。

「十夜さん…」

変わり果てた十夜小百合の姿に、九鬼は思わず哀れみの目を向けてしまった。


「クソがあ!」

しかし、それが十夜のプライドを傷付ける結果になった。

十夜は扉にもたれながら、体勢を整えると、

九鬼に向かって走り出した。

「貴様に、負けたせいでえ!」


机が並んでいる為、十夜は真っ直ぐに九鬼に向かって来れない。


「ごめん!」

九鬼は並ぶ机を、十夜に向かって次々に蹴った。

机同士がぶつかりながら、十夜に向かっていく。


「九鬼!」

腰元に、机が激突した十夜はさらに動きが鈍る。

そんな状況の十夜に向かって、九鬼は余った椅子を顔に向かって、五脚程投げた。
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