天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「ちょっと失礼」

松永の目の前で止まると、男は取れかけの手で、胸ポケットから煙草を取出し、

数本切断された指で、一本摘み出すと、煙草に火をつけた。

煙草の先に、赤い火が灯った瞬間、そいつは現れた。

松永は絶句し、声が出ない。

瞳のレンズに浮かぶ数値が、上がっていく。


煙草の火は一瞬にして、大きくなると、つけた男を焼き尽くし、やがて火柱のように大きくなり…

人のような形を作り出す。

「うわああああ!」

恐怖から、松永はいきなり刀を突き出すと、炎に向かって突き刺した。

更に後ろから、数十本の刃が炎を切り裂く。

いや、切り裂けなかった。

炎に触れた瞬間…刃はドロドロに溶けてしまった。

「鉄は…炎を切れない…ただもとに戻るだけだ」


松永は目を見開きながら、剣を抜いたが…刀身はどこにもなかった。

「な、なな…うわああああ!」

また後ろに逃げる松永に、

「お初にお目にかかる。我は、炎の騎士団長不動!」

不動は、深々と頭を下げた。

「裸で失礼するよ。本来なら、鎧をつけているのだが」

炎でできた体は、温度差なのか…表情があるように見せた。


3メートル近くある炎の先が、松永を見下ろしているように見えた。

「若き安定者よ。人を率いる者よ」




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