天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「敵じゃ…ない…?」

明菜は、リンネの言葉に息を飲んだ。

そんなことを言われたくらいで、気を許すことなんてできなかった。

ある意味、この世界の誰よりも、彼女が危険だった。

警戒心を解かない明菜を、リンネは無視して、神野の全身を目で確認した。

明らかに、彼のものではない右腕に、リンネは心の中で、ほくそ笑んだ。

そして、真っ直ぐに神野の目を見つめ、

「あなたが…沙知絵の彼氏ね」


「!?」

リンネの口から出た…思いもよらない言葉に、明菜と神野の表情が強ばる。

「間違い…ないようね」

二人の様子を見て、リンネは頷いた。



「どうして…それを知っている!」

神野は次元刀を突き出し、そのまま突進する。

しかし、リンネの体は炎のように揺らぎ、

神野の突きの体勢のまま、リンネの体を突き抜けた。


「だって…」

リンネは、神野と明菜の間に立つ。

「今…あたしは、沙知絵とともにいるから…」




「な!」

明菜と神野は絶句した。


「彼女とともにいるのよ」



「沙知絵は、どこだあ!」

神野はジャンプし、リンネの頭上から次元刀を振り落とす。

「せっかちな男ね」

リンネの髪が逆立ち、神野の全身に絡み付くと、自由を奪った。

神野はそのまま、空中で固定され、動けなくなる。

「神野さん!」

心配して、前に出ようとする明菜に、リンネは軽く微笑み、

「心配しなくていいわ。殺す気なら、とっくに殺してるから…」

リンネの瞳の奥に一瞬ちらついた…殺気に、明菜は息を飲んだ。

明菜は足を止めたが、決して後退ることはしなかった。胸をぎゅっと、握り締め、リンネを見据えた。

「フン」

そんな明菜に…リンネは軽く鼻を鳴らすと、神野の縛り付けたまま、明菜に近づいた。

「もう1人…行動をともにしている女が、いるはず」


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