天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「もう1人……?」


「そうよ…。もう1人いるはずよ」

リンネは、明菜を見据えた。

その瞬間、初めて…明菜は一歩下がった。

その様子に、リンネは心の中で、ほくそ笑んだ。

そして、足を止め、ゆっくりと両手を組むと、 

「別に…その女も、どうこうしょうという訳じゃないわ。ただ…」

「ただ……?」

明菜は、唾を飲み込んだ。

そんな明菜を嬉しそうに、数秒…眺めた後、リンネは言葉を続けた。

「その女に…近々、電話があるはず」

「電話?」

明菜は眉をひそめた。

「そう…」

リンネは頷き、

「その電話が…あなた方に告げるわ。沙知絵の行き先と……」

リンネは、明菜の目を見つめ、

「赤星浩一が来るべき場所をね」



「赤星浩一……こうちゃん…」

思いもよらない言葉に、明菜は目を見開き…動きが止まった。


「沙知絵の…居場所…」

リンネの髪に絡まれて、空中で身動きできない神野が、呟いた。


リンネのそんな二人の反応に、満足気に頷くと、

「電話を楽しみにすることね」

微笑みながら、テレポートし…その場から消えた。



空中で、解放された神野は、何とか転けることなく、着地した。

「沙知絵…」

しかし、着地するとすぐに、両膝を地面につけ、崩れ落ちた。

「神野さん…」

明菜は近づこうとしたけど…神野の雰囲気は、それを拒否していた。

そばで、ただ…見守る。


しばらく…神野は、声を出さずに泣いていた。


その嗚咽が終わるまで…明菜はただ見守っていた。



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