ノラ猫
「凛お嬢様。お食事のご用意が出来ました」
いつもの時間。
部屋をノックする音。
雇われた家政婦が、鍵をまわし、凛の部屋のドアを開けた。
「凛お嬢様?」
だけど入ったその部屋に、凛の姿は見当たらない。
変わりにあるのは、開けっ放しになった窓。
そよそよと心地よい風が部屋に入り込んでいた。
「凛お嬢様!!」
慌てて家政婦が窓から外を覗いた時には、すでにもう何の影すらも見当たらない。
凛がこの部屋を逃げ出したから、もう数十分も経っていた。
***
「はぁっ……はぁっ……」
もう大丈夫だろうか。
誰も追手はきてない?
ゆっくり振り返っても、誰かが追いかけてくる気配もなく、ようやく歩を緩めた。