ノラ猫
 



「とも…き……」


にいさんが家から出て行くのを感じて、再びベッドへと寝転んだ。

目を閉じて、今一番逢いたい人の顔を浮かべる。


優しく微笑んで
時に意地悪で
口が少し悪くて……。


あたし……やっぱり迷惑な存在なのかな……。


彼を思うと急激に苦しくなった。



チリン……


ふいに奏でた、小さな鈴の音。

ハッとして目を見開くと、左手には金色に輝く鈴。



(これをつけてれば、凛がどこにいるか分かると思って)



そう言って、身に着けてくれた小さな鈴。


ねえ、智紀。
あたしはここだよ。

リンリンと鈴を鳴らして、彼を呼ぶ。


逢いたい。
顔を見たい。
抱きしめられたい。


だけど……


きっともうあたしは、彼に逢わないほうがいい。
 
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