うそつきは恋のはじまり



「で?なんで帰って来たの?今日向こう止まってくるんじゃなかったっけ」

「その予定だったんだけど、明日お父さんが急遽仕事になっちゃって。遅いからおじいちゃんおばあちゃんと芽依は泊まって、私たちは帰ってきたの」



そ、そうだったんだ……。

「それならそうって連絡してよ」と小言を言う彼方くんはどう見ても“息子”で、こういうところも可愛らしい。



「えーと、改めてご挨拶しましょうか。初めまして、彼方の母です。いつも息子がお世話になっています」



茶色い髪をバレッタでまとめている頭をぺこ、と下げた彼方くんのお母さんは、恐らく40歳くらいだろうか。すらりとした体に穏やかそうな雰囲気を漂わせ、とても品のある人だ。

顔立ちは彼方くんとよく似ていて、丸い瞳も小さな顔もきっとお母さんに似たのだとすぐに分かる。



「彼方の父親ですー、よろしく」



その隣の黒い髪をした彼方くんのお父さんも、恐らく同じくらいの歳だろうか。

彼方くんがいつだったか言っていた通り本当に小柄な人で、無精髭と切れ長の目つきから受ける印象とは逆によく笑っている。

見た目も言葉遣いもあまり彼方くんには似ていない。……あ、でも彼方くんのちょっと不機嫌なときの顔がちょっと似ているかも。



ふたりをまじまじと見てから、自分が自己紹介をしていなかったことに気付き、また土下座に近い形で慌てて頭を下げた。


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