うそつきは恋のはじまり
「……お風呂、ありがとう」
その後、彼方くんの後にお風呂を借りた私はほかほかの体を彼方くんのジャージで包んで、二階にある彼の部屋へと入った。
「お湯加減、大丈夫だった?」
「うん、気持ちよかった」
「ならよかった」
ベッドに座りテキストを読んでいたらしい彼は、それをパタンと閉じると「おいで」と私を手招く。
彼方くんの部屋で……ふたりきり。少し緊張しながら彼のもとへ近付くと、その手はそっと私の体を抱きしめ、彼方くんに向かい合いまたがる形で座らせた。
「まだ髪、濡れてるね」
「う、うん。長いから乾くの遅くて」
「同じシャンプー使ってるのに、いい匂いする。なんでだろ」
「え?そうかな」
くん、と匂いを嗅ぎながら近付く顔は私の首筋へうずめられる。
……彼方くんも、いい匂いがする。
彼方くん自身の、肌の匂い。家の匂い。着ている服の匂い。それらが一気に、肺をいっぱいにしていく。