重なり合う、ふたつの傷
しばらく走って、天野くんが私の体を路地裏に押し込んだ。
『はぁっ、はぁはぁー、はぁ』
天野くんは喘ぐように息を切らしていて、壁に凭れている。
「大丈夫?」
「大丈夫だよ。これくらいなら」
胸を押さえながら小さく頷き、座り込んだ天野くん。
「これ、梨織のケータイだろ」
その手に握られたケータイの画面に灯る明かり。
それはまだ生きていた。
「ごめんね。ありがとう」
私は天野くんの背中を一生懸命擦った。
慎重に様子を窺い、お兄さんがいなくなったのを確認してから路地を抜け、側にあった公園のベンチに天野くんを座らせた。
「蒼太くん、ちょっと待ってて」