重なり合う、ふたつの傷


私は自販機で水のペットボトルを買って、天野くんに渡し、隣に座った。


「サンキュ」


天野くんはそう言うと水を口に含んだ。


「いつ帰ってきたの?」


「昨日。って、あいつ誰なんだよ」


「よく知らない」


「よく知らない男とラブホの前うろつくか、普通」


「うろついてたわけじゃないよ」


「やっぱ、梨織は天然だな」


天野くんのそれに私は微笑んでしまった。再びそのフレーズが聞けたのが嬉しくて。


「なんだよ。でも、あれだな。俺があの時間にあの場所を通ったのも偶然じゃなくて、運命なのかもな」


「蒼太くんはなんであそこに」


「ウォーキング。少しでも体力つけようと思って。多摩川の土手を歩いてたらあの辺りに着いてさ」


ああ、そうか。


天野くんが夏休み中にアメリカから帰ってきたという事は新しい治療法がなかったから……。


「清水から聞いたらしいけど、俺、梨織の事、幸せにしたいんだ。だから、運動できるようになりたくてアメリカへ行ってみたけど、結局新しい治療法はなかった」


「私はね……、私に子供ができた時、虐待するんじゃないか、って。蒼太くんもそう思って私と距離を置きたくなったんだと思ったの……」


「そんなの、一ミリも心配してねーって。でも、ごめんな。変な心配させて」


私の秘めていたなにかが溢れ出した。


「あのね、私ね、蒼太くんが運動できてもできなくても好きだから、好きなの!!」


「おーい、告白すんなって。俺から改めて言おうと思ってたのに」


「えっ」


「子供と運動会で走ってもビリになるかもしれない。だけど、キャッチボールくらいはできるから。だから、俺ともう一度つき合ってください」


「…………」


返事のできない私の頭を天野くんが優しく撫でた。





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