俺の魂を狂わす女
愛車のプジョーに乗り込んでイグニションを回した。

カスカスと乾いた音がしてエンジンがかからず何度か回した。

キーを抜いてもう一度回したがダメだった。

「どうしてかしら?」

脚が冷えてくるのを気にしつつ

運転席で途方に暮れた。

誰かを呼ぼうにも残業してこんな遅い時間に

果たして誰かに見てもらえるか不明だ。

コンコンと窓ガラスを叩く音がした。

見ると男性が立っていた。

ワイシャツの腕をまくりあげ

緩めたネクタイがガラス越しに目に入った。

「エンジンが掛からないのか?」

彼の落ち着いた声に正直安堵がよぎった。

「ええ。」

私はコクッと首を垂れた。

「俺が試してみるよ。」

私が不審そうな目を向けると

彼は後ろへ一歩下がった。

ドアを開けろという仕草だ。

私はエンジンがかかればいいと思い

渋々ドアロックを解除した。

「警戒しなくても俺はそこの者だよ。」

彼は工事中のビルを指差した。

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