俺の魂を狂わす女
私が車の外へ出ると

彼は入れ替わりに運転席に半分腰をかけ

脚は出したまま片手をハンドルに置いた。

彼がイグニションを軽く回すと

シュルルッブォンとエンジンが動く音がした。

私は彼に感嘆の目を向けてホッとした。

「プジョーはクセがあるんだ。」

「ありがとうございます。」

私は駐車場の暗い照明に心の中で悪態をついた。

暗くて顔がよく見えないわ。

それにワイシャツだけで寒くないのかしらといぶかった。

「いつもこんな時間まで仕事?」

彼はなめらかに言った。

「いえ、今日だけです。」

「そう。じゃ、気をつけて。」

軽く手を上げて立ち去る彼に私は頭を少し下げて見送った。

長い脚とガタイの大きい背中が印象に残った。

私は自分の脚が完全に冷える前に

家に帰って温かい湯舟につかりたかった。

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