じゃあなんでキスしたんですか?

 
薄暗い階段の踊り場でふたりきりになると、とたんに息が吸いづらくなった。自分の顔がみるみる赤くなっていくのがわかる。

「どうした」

「あ、すみません、あの」
 
なかなか言い出せない。
 
さらっと説明して渡してしまえばいいのに、言おうとする言葉が浮かぶそばから頭のなかでこんがらがっていく。

「小野田?」
 
不審げな声に、わたしは目をつぶってお弁当箱を差し出した。

「これを森崎さんに渡したくて」

「は?」
 
顔を上げられなかった。森崎さんの表情を見る勇気がなく、下を向いたまま続けた。

「お、お弁当なんです。その、一昨日のお礼っていうか」
 
そこまで言ってはっとする。これじゃ説明になっていない。

「ちちちがくて、すみません、わたしじゃなくて、妹です。マイがどうしても渡してほしいって。助けてくれたお礼にって」
 
体を折ったまま、数秒の沈黙が訪れる。両手で持ったお弁当がやたらと重く感じられる。
 
しばらく経っても受け取る気配がなく、わたしはおそるおそる目を上げた。
 
彼は直立したまま、驚いたようにわたしを見下ろしている。

「あの……森崎さん?」
 
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