じゃあなんでキスしたんですか?
声をかけた瞬間、端正な顔からみるみる血の気が引いていくのが分かった。
普段の無表情とも違う、感情のない目がわたしの腕の先を見る。
「やめてくれ」
「え……」
低く落ちた声に、思わずお弁当を引っ込めた。
「受け取れない。部下からの弁当なんて」
「あ、作ったのはわたしじゃなくて、妹」
「同じことだろ」
厳しい口調だった。切れ長の目が、不機嫌そうに歪んでいて、背中が冷たくなる。
「他人から見たら、小野田が私的に渡してるようにしか見えない」
「あの、でも、これはお礼……」
声が小さくなった。逃げ出したい気持ちをどうにかこらえていると。
「とにかく受け取れない。こういうのは迷惑なんだ」
胸に鈍い痛みが走った。
「こういう呼び出しは、二度としないでくれ」