じゃあなんでキスしたんですか?


茫然としているわたしを冷たい目で一瞥すると、森崎さんはすこし乱暴に扉を開き、エレベーターホールに戻っていった。
 
重い音を立てて、扉が閉まる。
 
全身から力が抜けて、わたしは踊り場の薄汚れた壁にもたれかかった。
 
そんなにいけないことだったのかな……。
 
見たことのない冷たい視線と声が、胸に突き刺さったまま、わたしを内側から責め立てる。
 
どうしよう……あんなに怒るなんて。
 
心臓からじくじくと痛みが漏れ出して、涙がにじんでくる。
 
お弁当を持つ手に力が入らない。


「……なにやってんだ、おまえ」
 
下の階から声が響いたのは、そのときだった。


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