じゃあなんでキスしたんですか?
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会社の裏手にある公園は、公園というよりちょっとした広場という感じでとても狭いけれど、風の通り道になっている。
今日は湿度が低いのか、木陰に隠れて強い日差しを遮ってしまえば過ごしやすい。さわりと吹く風は、まるでわたしをなぐさめるようにやさしく吹き抜けていく。
風にあわせて踊るモザイク模様の木漏れ日の下で、わたしは桐谷さんに色違いのランチクロスで包まれたお弁当を渡した。
「へえ。妹が礼に、ねぇ」
青と白が折り重なったチェック柄の包みをしげしげと見つめ、桐谷さんはつぶやく。
「殊勝なフリってとこか」
「え?」
「いや、こっちの話。で、俺がこれを食っていいわけ?」
手に持った包みと、わたしが膝の上で広げているお弁当を見比べる。
「どうぞ。夏場だし、早く食べないと傷んじゃうので」
森崎さんの口に入らないのなら、どうせゴミ箱に捨てることになるのだ。
「マイには言えないなぁ……」
ランチクロスの結び目に指をかけながら、桐谷さんはためらうようにわたしを見る。
「これ、ここで開けて平気か? 開けたらお前の弁当より豪華ってことない? 姉より男の弁当に力入れてそうじゃん、あの妹」