じゃあなんでキスしたんですか?
「失礼な! マイの何を知ってるっていうんですか!」
「あのな、俺はお前がショックを受けるんじゃないかと」
「ご心配なく。マイが朝作ってるところをちゃんと見てましたから。中身はまったく一緒です!」
「あっそ。つーか、だったらなおさら森崎さんになんて渡すべきじゃねぇじゃん」
「え……」
桐谷さんが指をひねると、蝶が羽をひらくようにクロスがひろがり、視界に鮮やかなイエローグリーンが映る。わたしと色違いの、細長いお弁当箱だ。
「同じフロアでこんな色違いの、かつ中身が全部一緒の弁当なんて広げてみろよ。ふたりの関係を疑わないほうがおかしいだろ」
声が出なかった。
心臓をからだの内側からひゅっと引っ張られたように、背筋が寒くなる。
「そこに頭が回らないっつーのは、やっぱりガキってことだなー」
わたしに対してなのか、それとも妹のことを言っているのか、桐谷さんは意地悪な声で続ける。
「特に森崎さんは公私混同を嫌うんで有名だし」
視線が落ちる。
黄色、ピンク、緑、赤……ミニチュアの花畑みたいに彩り豊かなお弁当のおかずは、ひと目見ただけで手が込んでいるとわかる。