じゃあなんでキスしたんですか?


「へえ。最近の抗菌シートには連絡先が書いてあるのか」

「え?」

「小野田舞。08029――」

「わああ」
 
桐谷さんが読み上げていた紙切れを、あわててひったくる。
 
弁当箱と一緒にランチクロスに包まれていたらしいそれは、手のひらにすっぽり収まるくらいのメモ帳で、丸っこい妹の字がつづられている。
 
名前に電話番号。
 
そして、アドレスと【メールください❤】の文字。

「はぁん、なるほどね。弁当の中身は一緒だけど、こっちは手紙入りか」

「マイちゃん……」
 
あきれると同時に背中が冷たくなった。
 
まさかあの子、本気で森崎さんを狙ってるんじゃ……。 

「ハートマークのオンパレード。媚びっ媚びじゃねえか」
 
となりからメモ帳を覗きこんで笑うと、桐谷さんはマイお手製のひとくちハンバーグをほおばった。ばかにしたような言い方に、ついカチンとくる。

「マイは普段からこうですから! 男の人にだけいい顔してるんじゃなくて、素の性格がもう可愛いっていうか」

「あーうぜえ。姉バカはいいから。つーか森崎さん、カノジョいんじゃねーの」

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