じゃあなんでキスしたんですか?
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桐谷さんが言っていたことが本当なら、森崎さんは本心ではわたしに好意を持ってくれているはずだ。
酔った彼が子供のように素直な気持ちで行動したのなら、わたしは森崎さんがキスをしたいと思える相手ということだ。
リビングでノートパソコンを開きながら、傍らでテレビを見ている妹に目をやる。
彼女はアクリル素材でできた、羊みたいにもこもこのパーカーとショートパンツのルームウェアを着て、テレビに映った動物にはしゃいでいる。
「やーん、かわいい~! アルパカ好きぃ」
姉バカと言われても仕方ないけど、同じ反応をしているテレビ画面のなかのアイドルと比べてもマイは遜色がない。
ただ、マイの『好き』は、とても範囲が広くて、一元的だ。
森崎さんに渡せなかったお弁当は、結局エースがきれいに平らげてくれて、わたしは空の弁当箱を妹に返した。
連絡先を書いたメモはわたしが没収したまま。
「食べてくれたんだぁ」と嬉しそうにする妹を見て胸が痛んだけど、本当のことなんて言えるわけがなかった。
画面のなかでもぐもぐと口を動かしているアルパカは、確かにつぶらな瞳をしていて愛らしい。
アルパカを「かわいい」と眺めているように、森崎さんを「かっこいい」と評して、どちらも同じように「好き」と口にする妹。
見本を前にしたような気持ちで、わたしは考え込む。