じゃあなんでキスしたんですか?

 
森崎さんも、外から見たらまったくそうは見えないけれど、マイみたいに“好きの範囲”が広い可能性はある。
 
ちょっとでもいいと思ったら、誰かれ構わず、すぐにキスをしてしまうのかもしれない。
 
そんなこと、考えたくはないし、森崎さんのイメージにまったくそぐわないけれど。
 
どちらかというと桐谷さんはそんな感じがするなぁ、なんて余計なことを思いながら、わたしは森崎さんの顔を思い出す。
 
嫌われてはいないはずなのだ。
 
それなのに、どうして。
 
会社での冷たい態度を思い出して、人知れずため息がこぼれる。
 
心の中では好意を持っているのに、まるで正反対の態度を取る、その理由は?
 
もしかして、お弁当の一件で嫌われたのかな。
 
思いついた途端、ずしんと肩が沈む。
 
でもそんなことで人の好き嫌いを決めてしまう人だろうか。
 
そして、もっと根本的なことを思い出した。

「公私混同を嫌うから?」
 
わたしの呟きにマイが「え?」と振り返る。

「ううん、なんでもない」
 
わたしはノートパソコンのキーに手をかけた。
< 139 / 265 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop