じゃあなんでキスしたんですか?


「どうして……」
 
待ち合わせ場所のケーキ屋の前で、森崎さんがショーウィンドウを覗きこんでいる。
 
心臓がざわついた。
 
昨日わたしを振り払ったその手は、傍らに立つ華奢な手と絡まっている。

「なんで…!?」
 
ふたりはわたしに気づかないまま、ケーキを指さして何か話をしている。
 
マイの顔が楽しそうに崩れる。
 
わたしはその場に立ち尽くした。
 
観葉植物に触れた指先が、ふるえる。
 
どうしてここにいるの。
 
どうしてマイと手をつないでいるの。
 
胸の奥でとぐろを巻いていた感情が、無数の棘を張り巡らせて、内側からわたしを突き刺した。
 
息が、できない。
 
堪え切れず、わたしは下りのエスカレーターを走り降りた。
 
それからどうやって帰ってきたのか、よく覚えていない。
 
気が付いたら起きたときと同じようにベッドに突っ伏して、かすかに残る頭の痛みを感じていた。
 
風邪で熱があるときに似ている。
 
目と鼻のあいだに何か異物がつまっているようで、目の前がぼうっとする。

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